バトルロイヤルゲームの成功から知るモバイルゲームの未来とは?

バトルロイヤルゲームがモバイルゲームジャンルとしてこれほどまでに大きな成功を収めると誰が予想できたでしょうか。

Avatar Yuanxi Ou Marketing Manager 2018-07-29

バトルロイヤルスタイルのゲームがモバイルで爆発的にヒットしたことはもちろんのこと、こうした成功を勝ち取るまでに途方もない時間を要したという点も驚きに値するでしょう。オリジナルの映画「バトル・ロワイアル」は2000年にリリースされていますが、このゲームジャンルが注目を浴びることとなったのは、The Hunger Gamesの本や映画がリリースされてからです。

まず最初に「Minecraft」と「ARMA 2」がバトルロイヤル系MODとして人気を博し、その結果2015年に「H1Z1」の早期アクセス版がリリースされ、さらに2年後に「PlayerUnknown’s BattleGrounds(PUBG)」や他のゲームが相次いで発売されるようになったというのが一般的に知られる経緯ですが、バトルロイヤルゲームがモバイルゲームジャンルとしてこれほどまでに大きな成功を得るとは、当初誰もが予想していませんでした。

おきて破りのゲーム

モバイルゲームの概念を打ち破った「PUBG」。

PUBG」は、専用キーボードとマウスでフィールドを自由に移動し、複雑なアイテムインベントリを駆使し、不確定なセッション時間で戦う、即時反応要求型の1人称視点シューティングゲームであり、こうしたゲームの構造上、モバイルフレンドリーなプレイ体験を生み出すことは難しいと考えられていました。

しかしながら、2017年にPUGBのPC版で国内で大成功をおさめた中国のパブリッシャーのNetEaseとTencentはモバイル版のリリースに乗り気でした。ここで注目したいのは、中国は長きにわたりゲームのトップ市場であり続けているということです。

Tencentは水面下で、PUBGの韓国の開発者Bluehole / PUBG Corpに投資し、公式モバイル版のライセンス契約の交渉を行うと同時に、非公式版のリリースも進めました。 非公式版は「Glorious Mission」というタイトルで2017年11月にリリースされ、同年の第4四半期において、中国で最もダウンロードされたゲームの1つとなっています。

また、NetEaseは、2017年後半に中国で3タイトルのバトルロイヤルゲームをリリースし、その後すぐに全世界に展開しています。Tencentの「Glorious Mission」と同じく、これらのゲームは 「荒野行動(Knives Out)、「Rules of Survival 」、「Survivor Royale 」といったタイトルがつけられ、「バトルロイヤル」というフレーズは使われず、マネタイズ要素も盛り込まれませんでした(しかしながらPUBG CorpはNetEaseに対し著作権侵害で提訴し、またEpicに対して「Fortnite」をめぐって訴訟を起こしています)。

これら2つの企業、特にNetEaseにとって、これは純粋でシンプルな市場席巻となり、数億回のダウンロードを達成し好調な滑り出しを見せました。

しかしながら、実際の利益はマネタイゼーション要素の追加(プレイヤーがコスチュームなどのアイテムを入手するために、ルートボックス/ガチャへ課金すること)により発生しています。

Rules of Survival はフィリピン、インドネシア、ベトナム、シンガポール、マレーシアに至る東南アジア諸国で、1億5000万回以上ダウンロードされ、トップ10入りを果たしました。同ゲームの中国版は「Terminator 2: Judgment Day 」という風変わりなタイトルでリリースされ、売上トップ50入りを果たしています。

一方で、「荒野行動(Knives Out)」は全世界でおよそ2億回ダウンロードされ、中国でも良好な興行収入を収め、バトルロイヤルの発祥の地である日本においても爆発的にヒットしました。

Survivor Royale」のみが不発に終わりましたが、リリースした3作品中の2作品ががヒットし、さらにはそうした成功が、Tencentが2018年初頭にPUBGの公式モバイル版の2タイトルのリリースを発表する前に先駆けたものであったことに、NetEaseが満足していることは間違いないでしょう。

オフィシャル版の承認

2018年3月に全世界でリリースされたPUBGのモバイル版は、オリジナルのPC版に忠実に則した作りで絶大な人気を集め、92カ国(Google Playでは62ヵ国)のApp Storeで、ダウンロードランキングで1位となりましたが、強力なマネタイズには至っていません。興味深いことに、中国での同ゲームの国内版は、ダウンロード数という観点からはとても人気が高いものの、IAPが含まれていないため、売上のトップランキングには入り込んでいません。

Tencentの他のPUBGゲームも同様の状況となっており、「PUBG: Army Attack 中国でのみリリースされ、発売以来最もダウンロードされたゲームの1つであるものの、マネタイズ要素は含まれていません。

こうした中、欧米諸国でリリースされたEpicの「Fortnite」 は、クロスプラットフォーム型のバトルロイヤルや新しいマネタイズアプローチで成功を収めています。

ビルディング・ザ・パーフェクト・ビースト

バトルロイヤルゲームがモバイルデバイスに向かないジャンルだとしたら、「Fortnite」はアプリストアで収益を上げることができないはずでした。

バトルロイヤルがモバイルゲームに向かないとされた理由の1つは、ファイルサイズが3.5GBを超えるほどに大きく、モバイルデバイス向けに最適化されていないことです。iPad Proでさえローディングに気の遠くなるような時間がかかり、UIは大画面向けのデザインとなっています。また、タッチスクリーン上のバーチャルパッドをペースの早い戦闘ゲームで使うことによる操作上の課題もあります。

多彩なアイテムコレクションと建築バトルがミックスされた「Fortnite」では、プレイヤーはユニークなハイブリッドゲームのプレイ体験を楽しめます(もちろん、大半のプレイヤーはプレイするたびに負けてしまうのですが)。

NetEaseのPUBG調のゲームが数多くのプレイヤーを魅了したように、モバイルゲームが持つ強みは、世界中のオーディエンスを数十億のバトルロイヤルパーティーにいざなえるというということです。

Android版「Fortnite」が公開される頃には、世界中の誰もが、それなりのモバイル端末を持っていれさえすれば、数えきれないバトルロイヤルゲームの中からお気に入りを見つけ出し、楽しむことができるようになるでしょう。

技術的問題や最善には及ばないユーザーエクスペリエンスにも関わらず、バトルロイヤルゲームは、かつてないほどにモバイルゲーマーに支持され、一大ブームを巻き起こしています。

特に、「Fortniteは、期間限定のスキン(コスチューム)が獲得できたり、様々なチャレンジが楽しめるバトルパスへの課金によるマネタイズを行い、かなりの規模のプレイヤーから膨大な収益を引き出すことに成功しています。

iOS上での「Fortnite」モバイル版の販売実績は、ピーク時の1日当たり180万ドルから、2ヶ月未満5000万ドル程度で推移しています。Android版が公開される頃には、一月当たり5000万ドル程度が現実的な売り上げ見込みとなりそうです。

好みの差異

モバイルでのバトルロイヤルゲームの成功の意義は、今までモバイル上でうまくいくとされていたことや、その理由を根本からくつがえしただけにとどまりません。

興味深い点は、そのようなゲームに対する消費者需要は高く、比較的低いユーザー獲得コストで、膨大なダウンロード数が得られているということです。あらゆるストリーマーが1年中こうしたゲームのプレイを披露してくれますし、従来のメディアですら攻略法などを取り上げてくれるため、ターゲットを絞った広告を大量に打つ必要がないためです。

人気タイトルからわかる各国の好みの違い

Tencentの「PUBG」の公式モバイル版は、売上トップ100入りは果たしたものの、欧米諸国ではあまり成果を上げていません。 また、NetEaseの「 Rules of Survival 」は米国のiPhoneの売上ランキングで、1000万ものDAUを抱える「PUBG」のモバイル版よりも優勢に立っており、「荒野行動(Knives Out)」は、日本で売上トップ10入りを果たしています。

最大の戦場は中国

NetEaseのゲームは膨大なダウンロードを獲得しているものの、 「Terminator 2/Rules of Survival」 と 「荒野行動(Knives Out)」は、中国のiPhoneゲーム売上ランキングではトップ100にとどまっています。Tencentの配信力により「PUBG」 のモバイル版は発売以来、最もダウンロードされたゲームで1位を獲得し続けています。こうしたゲームがマネタイズを始めたときに何が起こるかが見ものとなるでしょう。

最も予測できないことは、中国市場が「Fortnite」のローカル版のリリースにどう反応するかということです。Epicの主要株主であるTencentが運営権を持っているものの、国内にコンソール版のプレイヤー基盤がないことを加味すると、西洋向けのビルド要素が盛り込まれたコンソールゲームは、すでにローカルで開発されたモバイル向けのバトルロイヤルゲームに慣れ親しんでいるプレイヤーにとって魅力的にうつるのか、という疑問が残ります。

さらに長期的には、これらのコアなPC/コンソールゲームのモバイル版の成功は、少なくともハイレベルのマネタイズが実現さえすれば、ますます女性指向かつメタゲームフォーカスになりつつあるプレイヤーの動向を変えることができるでしょうか?

つまり、「Fortnite」や「PUBG」は、「Overwatch」、「Battlefield」、「GTA」といったモバイルゲームを奮い立たせ、「Pokémon GO」、「Candy Crush Saga」、「Design Home」、「Friends With Words」といったゲームに打ち勝つことができるのでしょうか?

ゲームとユーザー行動

一般的な見解では、おそらくむずかしいとされるでしょう。モバイルにおいては、気軽なゲームを頻繁に短いセッションでプレイするという利用パターンが深く浸透しているため、コンソールスタイルのゲームが長きにわたって競争を続けることは、不可能に近いといえるかもしれません。

結局のところ、モバイルゲームは、自身をゲーマーとは思っていない人々がプレイするゲームなのかもしれません。

とはいうものの、一般的な見解では、そもそもバトルロイヤルゲームはモバイルで成功しないとされていました。

ゲームと予測不能なユーザー行動がぶつかりあう戦場では、折り合いをつけつつすみやかに策を講じていく必要があるでしょう。

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