【モバイルゲーム中国進出 虎の巻】第2回 ゲームの中国ローカライズについて

中国進出時に気をつけたいローカライズ(現地対応)のポイントについてご紹介します。

2018-08-27

第1回では,中国モバイルゲーム市場の現状とプレイヤーの特徴などについて紹介しました。中国におけるスマートフォンユーザーはすでに7億人を超える規模に成長していると言われており,2016年のモバイルゲーム単独の売上高は,中国の調査会社iResearchによると,1020億元(160億ドル超)に達しており,近年この巨大市場を目指して日本含め海外の多くのゲーム会社が進出しています。しかし中国以外のゲーム会社にとって,中国市場はゲームのローカライズからローンチ,マーケティングに至るまで,現地対応が求められるため,参入がとくに難しい市場の一つです。

 そこで第2回となる今回のコラムでは,中国進出時に気をつけたいローカライズ(現地対応)のポイントについてご紹介します。

 ローカライズで真っ先に思いつくのは,言語への対応でしょうか。中国で話されている主要言語は北京語と広東語です。また,書き言葉は中国本土で使用されている簡体字と,香港,マカオ,台湾で使用されている繁体字の2種類があります。もちろん,言語対応はローカライズをするうえで最も重要な要素のひとつで,とくに中国の人々は,ちょっとした言語表現の不自然も敏感に感じとります。日本人がよく勘違いをするのが,英語の扱いです。普段,英語をカタカナを用いて日本語に同化させて使っているため,同様に中国でも英語は自然に使われているだろうと思い込む傾向があるのです。中国では英語はあくまで英語であり,違う国の言語です。

■ゲーム開発者が中国進出で一番苦労する「ローカライズ」図2 中国と中国国外で最も人気のあるゲームジャンルの比較(出展:GameAnalytics)

 Mobvistaでは,昨年秋に,世界中のゲーム会社が中国進出についてどう感じているのかを把握するため,グループ会社でモバイルゲーム会社向けに解析ツールを提供するGameAnalyticsと共同で,中国国外のゲーム会社400社に調査を行いました。
 その結果,実に約6割のゲーム会社が「中国でのゲームのローンチは予想以上に大変だった」と回答しました。さらに,ローンチの際のどういった局面が困難であったか尋ねたところ,中国特有の法律規制 (レギュレーション)の順守と並んで,中国人プレイヤーや市場傾向に合わせて自社のゲームをローカライズすることが大きな障害となっていたことが分かりました(図1)。

■中国進出時に気をつけたい,ローカライズのポイント

ポイント1:中国人プレイヤーが好むジャンルのゲームを提供する
 中国で成功をするためには,まずは中国人プレイヤーに好まれるゲームジャンルを持ってくることです。人気のないゲームのジャンルの場合は,ヒットさせるのに相当な苦労が伴うことを覚悟しておいたほうがよいでしょう。

 では,現在の中国ではどのようなゲームが人気なのでしょうか。中国にもあらゆるジャンルのゲームがありますが,実は人気のゲームジャンルはほかの国々とほとんど変わりません。中国においても,アクション,シミュレーション,アーケードといったジャンルが人気です(図2)。

図2 中国と中国国外で最も人気のあるゲームジャンルの比較(出展:GameAnalytics)

ポイント2:アートスタイルを合わせる
 中国で好まれるアートスタイルは,欧米と比べてかなり違っています。その点を考慮することはローカライズを成功させる上で重要です。

 たとえば,中国では多くのゲームプレイヤーが「Chibi」と呼ばれるアートスタイルを好みます。「Chibi」とは大きな目や誇張された特徴を強調しており,日本のアニメのキャラクターアートに似ています(※日本でいうところの「SDキャラ」)。「Chibi」のスタイルでは可愛くユーモラスな描写を強調しており,海外のゲームが中国向けにローカライズする際にもよく使われます。たとえば米国の人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の米国版と中国版のキャラクター(闘いの女神シヴィアとアカリ)がまったく異なるスタイルで描かれています(図3)。

図3 「リーグ・オブ・レジェンド」の闘いの女神,「シヴィア」と「アカリ」のUSバージョン(それぞれ左側)と中国バージョン(それぞれ右側)

    一般的に米国版のゲームのキャラクターはキャラクターの強さを重視しており,より現実味のある体や顔つきとなっており,筋

肉もよりはっきりと描かれる傾向にあります。反対に中国版ではよりアニメ的で,ソフトなスタイルで描かれています。体つきは誇張され,顔つきはより優

 

しく,髪はより様式化され大きく描かれています。

 一方で,日本との比較でいくと,好まれるデザインに関しては,お互いに文化的に近いこともあって,実はよく似ています。そのため,デザインをほとんど変えずに中国でリリースされる日本のゲームも多いのです。

 また,中国向けのゲームでは,ゲーム内のグラフィックスを変更し,中国の美的感覚に合ったセッティングやオブジェクトを入れ込むことも重要です。グラフィックスに中国風の建物や場所を入れ込んだり,特定の色を使用したりすることで,プレイヤーにとってゲームがより魅力的なものとなります。
 たとえば,デンマークのモバイルゲーム「サブウェイ・サーファーズ」の中国版では,通常のレベルデザインが中国式の瓦屋根を含む形に変更され,ランタンが吊るされています。さらに,赤,青,黄色の色が多く使われおり,中国の伝統でこれらはそれぞれ火,木,土の三種の元素を表す色であるとされています(図4)。

図4 中国版「サブウェイ・サーファーズ」で見られる中国様式の建物

ポイント3:カスタマーサポートとゲームコミュニティをローカライズする
 中国国外のゲーム会社の多くは,自国や中国以外の海外展開においては,FacebookやTwitterなどのソーシャメディアにカスタマーサポート用のアカウントを持ち,プレイヤーを直接サポートしていることが多いです。しかし,中国ではFacebookやTwitterなどにアクセスできないため,カスタマーサポートを他の方法でローカライズする必要があります。
 たとえばメジャーなゲームでは,プレイヤーは中国国内で使用可能なソーシャルメディアを含めたさまざまな手段で,ゲームパブリッシャーやコミュニティ内のほかのプレイヤーとコミュニケーションを取ります。ゲームの公式プレイヤー向けのQQグループ,公式WeChatパブリックアカウント,公式オンラインフォーラム,Baidu Tiebaのフォーラム,Weiboのアカウント,その他の潜在的なコミュニティプラットフォームなどがこれらにあたります。中国進出したゲーム開発者は,こうしたプラットフォームを日常的に監視・維持し,管理しなければなりません。

 また,中国のゲームではしばしばスタンダード,VIP,スーパーVIPといったレベル別でサポートとアクセスを提供する階層式のサービスシステムが採用されます。プレイヤーがどの程度ゲームに投資したか,またはどの程度価値があるプレイヤーかによって,質問やリクエストの優先順位が与えられます。これは,カジノでたくさんのお金を使うギャンブラーに最高のサービスが提供されるのと同じ要領です。下記は,VIPレベルのサービスの例ですが,このほかにもゲームをやめてしまったVIPプレイヤー向けに,やめた正確な理由や再びプレイしに戻る気はあるかどうかを確認するためフォローサービスまでもが存在しています。

  • VIP専用のマンツーマン電話サービス
  • 問題が発生した際の優先対応
  • VIP専用の評価・苦情メカニズム
  • VIP専用の特別フィードバックメカニズム
  • VIP限定プロモーションやオファー
  • VIP専用バッジ,アイコン,その他のステータスシンボル

 中国で自社ゲームのローンチを成功させるには,適切なローカライズが不可欠です。ポイントを押さえてローカライズすることが成功への近道となるでしょうか。

 次回は,「現地パブリッシャーとの提携とマーケティング」について紹介します。

 

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